当日は、9時に小学校前に集合し荷物を置いた後、早速体育館に作品を展示した。奈良芸の作品は、私が軽トラで運び、武蔵美の分は郵送と手持ちで運び込まれた。参加学生のほぼ全員が自分の作品を出展したが、この鑑賞を進めるに当たり、事前に運搬方法を考えておく必要があると感じた。右の写真は、学生達が作品の配置等の確認を行っている様子である。
実施前日に小学校から提案があり、2限目に鑑賞前に顔合わせも兼ねて学級に入り込むことになった。急遽どのように進めるかが話し合われ、自己紹介の名札作りで交流を深めることになった。学生5名ずつが、5年生2クラス、6年生1クラスに入り、グループに分かれて思い思いの名札を作った(右写真)。クラスによって随分児童の反応が違い、次の鑑賞授業に結びつけようと必死でとけ込もうとする学生の姿が見られた。
右の写真は、午後の本番までの1時間を使い、三澤先生が事前指導されているところであるが、興味をもった児童たちが、学校の休憩時間に体育館に集まり、並べられた作品に群がっている様子が後ろに見える。もう既に鑑賞が始まっているのである。その姿を横目に、現地での模擬授業が実施された。いよいよ本番とあって、学生たちの表情も真剣である。
2回の練習の後、休む間もなく学級に入り、給食を一緒に食べることになった。児童と更に交流を深めようということであるが、ちなみに学生たちは、手弁当である。
さて、いよいよ本番。授業は前掲の学習指導案に基づいて進められた。まず最初に、これまで山の辺小学校で中心になっていただいた池田先生から授業の主旨について説明が行われた。そして、武蔵美のリーダーの河野さんから、テーマ「話し合ってつなげよう」と3つの鑑賞のポイント「よく見よう、思いついたこと発見したことを言葉にしよう、人の意見に耳を傾けよう」が説明された後、9つのグループに分かれた児童たちはファシリテーターに導かれて最初の作品の前に集まった。
展開1では、1回20分の鑑賞を2作品で行い、その後10分間で自分の好きな作品を自由に鑑賞することになる。展開2では、1回10分、計3回自由に作品を選び、作品の前にいる作者に質問をしながら鑑賞するという方法である。子どもたちは元気よく自分の発見したこと、思いついたことを次々と言葉にした。
5時間目の最初の鑑賞では、午前中の学級の入り込みや共に給食を食べたことが妨げとなったグループもあったようだ。学生と児童が親しくなり過ぎて、緊張感を欠いてしまったようで、児童が作品に集中できない様子が見られた。
しかし、時間が経つにつれ、鑑賞の仕方に慣れてくると子どもたちの集中力も増し、深い内容の発言も出るようになっていった。今回は、武蔵美が抽象的な傾向、奈良芸が具象的な表現の傾向の強い作品であったが、子どもたちの反応には特に大きな違いは感じられなかった。これらのことから、見て感じたこと、気づいたことを中心に進めていくこの鑑賞方法は、小学校高学年の児童に抽象作品を鑑賞する機会として用いると効果的であると考えられる。
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