午後の5・6限は、奈良県教育委員会の週報にも登載され公開授業となったので、県内の小中学校の美術の先生方の姿も多く見られる。
ところが、周りを多くの先生方に囲まれた中学生たちの表情が一変に硬くなってしまった。ファシリテーター役の学生たちに試練が訪れた。元々シャイな田舎の中学生たちは、なかなか口を開かない。困った学生たちの顔があちこちで見られる。「みんな発言してくれないので、どうしたらよいでしょうか。」と休憩時間に相談に来た学生がいた。「本来の中学生の姿だから、焦らずじっくり進めたら」とアドバイスするが、反応がないのが一番難しい。
しかし、学生たちは必死になって対応しようとしていた。今までよりも、もっと近くに寄って、生徒たちの蚊の泣くような声を聞き逃すまいと耳を近くに寄せ、何とかしようと必死である。うまくいかない時こそが、様々な工夫を引き出すチャンスでもある。
終了後、会議室で全体交流会が開かれた。参観されたある中学校の先生から、生徒からの発言が少なかったことへの指摘がなされた。その時、三澤先生から担当の北山先生へ「普段の生徒達の様子と、先ほどの授業での様子に違いはありましたか。」と質問され、「生徒たちは、普段から発言が少なく、今回は、口には出さないが必死に考えている様子を見ることができ、とても嬉しかった。」と答えられた。見ること、そしてそれを基に考えることが、この鑑賞では重要であり、この感想がそれを物語っているように感じた。
全体交流会では、残念ながら武蔵美の学生たちは作品搬出の手続きのため不参加であったが、本学の学生5名が参加し、今回の体験を通して感じたことを一人ひとりが発表した。そのときの学生達のしっかりとした発言内容に、参加された先生方から驚きの表情を見ることができた。三澤先生からは、「2年間でこれだけ成長することができるのですね」という言葉をいただき大変嬉しかった。
最後に、三澤先生から個人と社会の関係性についての講義があり、今回の活動と絡めながら話された先進的な考え方に頷く姿があちこちで見られた。
夕方からは、奈良市内で親睦会が催された。文科省教科調査官も参加され、主催者の奈図美研や県教委、小中学校教員、大学教員、大学生との間で交流が図られ、盛会のうちに「旅するムサビ」は終わった。
– 25 –