○ 今回の体験を通してして学んだことが2つある。1つ目は「生徒あっての授業』だということだ。普段の教職の授業では、相手は大学生で何の支障もなく時間通りに授業することができる。しかし実際はそうではなく、一言で「中学生」と言っても素直な生徒から恥ずかしがりの生徒、授業自体に興味・関心をもたない生徒など様々な生徒がいる、そんな中で普段の授業の様なワンパターンな進め方では到底生徒の関心を引くことはできなかった。こちらから質問しても大半は帰ってこずに沈黙が生まれ、そこから焦りが生まれペースを乱し生徒の関心を引けないまま授業が終わってしまうということが何度かあった。最初は緊張や見栄などから本来の授業形態を忘れていたが、様々な生徒と触れ合うことにより気が付くことができた。この授業は生徒が参加し自分の思いや発想を発言することによって初めて成立する、ファシリテーターがどんなに優秀であっても生徒が授業にいなければ何の意味もないと改めて気付いた。
2つ目は、価値観の違いと共有だ。今回は関東圈のムサビと関西圈の奈良芸がそれぞれ作品を持参し、互いの作品に様々な意見を抱き、それと同じように榛原中の生徒も様々な思いや感情を抱いた。それらの思いや価値観は、鑑賞授業によって大勢の人数と共有しそこから新たな発想や構想を生み出すきっかけをそれらは作り出していた。また、授業の中だけではなく私たち学生にもそれらの共有は確実に私たちに新たな発想を与えてくれたと思う。
以上のことから今回の榛原中学校での鑑賞授業は生徒や教師、作者やファシリテーターなど枠を超えて意見を共有でき、また他大学とのコラボレーションにより私たち学生も含め良い経験ができたと誇りに思う。今後も、改善を加えより良い経験を生徒たちに与えられれば光栄であると思う。
○ 対話による鑑賞授業を小中学校で実際に行ってみて、発言への参加に関しては各発達段階や個々人によって違うが、どの児童生徒も実物の作品を前にして興味をもって個々に感じ、考え、そして作者の意見を聞いていた。一方で、鑑賞途中で作品から意識が離れる児童生徒も少なからず見られ、いかにして鑑賞に引き込むかという点に苦心し、これは実際の教育現場においても共通する重要な点と思った。
自分の作品に対して自由に発想して率直な意見が出たことで、自分が気にしていなかった点に気づいたり、作品に対して新しい見解を持つことができ、また今回は武蔵野美術大学との共同授業で、他の美術学生の作品を見る、更に交流することは非常に新鮮で楽しく、一美術学生としても非常に意義深い経験となった。
「子どもたちの目を借りて作品鑑賞を楽しめばよい」と、三澤先生がおっしゃったことが心に残り、授業前は不安等を抱えていたが、終わってみると難しい点もあったが私自身非常に楽しんで鑑賞を終え、授業をする側にとっても面白いと感じた。
○ 小学生に授業をするのも鑑賞授業をするのも初めてで、どうなるか不安であったが、予想以上にたくさんの反応が返ってきたこと、子どもならではの素直な意見を聞けたことは新鮮だった。鑑賞授業の経験をできたことはもちろん、これからの作品づくりにも生かせる発言もあり、今回この活動に参加できたことをうれしく思う。またこういった機会があれば参加したい。もっともっとたくさんの学校に広めていってほしい。
○ 対話による鑑賞授業を実践して思ったことは、普段のこの授業でファシリテーター役として実践したことがあまり生かせなかったと感じたことだ。それは、相手が小学生や中学生であり、美術作品に興味を示さなかったり、気恥ずかしかったり、自分の考えを言うことが苦手な生徒がいたからだ。この場合、限られた時間内では発言はなかなか引き出せず、スムーズに行かないので、この対話による鑑賞を実際に授業で行う場合は、ファシリテーター主導ではなく、子どもたちの主体性に任せて、グループの中で子ども同士が意見を言い合い、それをまとめながら展開していった方がよいと感じた。「対話による鑑賞」のねらいは「作品を観察し、推測したことを自分自身の言葉に置き換えることができる」「自分の思ったことを話すことで、自分なりの意味や価値観を作り出せる」ことです。このねらいに立ち返って、授業の形態も考える必要があると思う。集団の中で個人の内面性が引き出され、価値観や美意識が生まれるという三澤先生の言葉が印象的であった。
○ 武蔵美とのコラボレーション授業をする前は、うまくファシリテートできるかとても不安だった。しかし、三澤先生の事前指導や訪問先の小中学校の皆さん方の歓迎により、非常に楽しくファシリテーターの役割をすることができた。気がついたことは、発言の有無にかかわらず、児童生徒は真剣に鑑賞していることだった。鑑賞することによって作品の雰囲気や作者の意図を感じ取ろうとしていたと思う。ファシリテーターは、そういった児童生徒が作品と対話しやすい環境づくりをしなくてはならないと思った。
○ 今回の活動では、小中学校の児童生徒、武蔵美の学生とその作品から様々なことを学ばせていただいた。作品を見つめる子どもたちから真剣に考えている表情や、発言したいけれど言えない姿、学年やクラスによって違う様子を感じることができた。鑑賞することを楽しく思ってくれたらなと思う。
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