ウィネトカ・プランのように共通認識としてもつべき学習活動と自由な発想や構想ができる学習活動などに分けて取り入れたグループ活動を学習指導案の作成時に取り入れるのである。互いのそれまでの経験の共有化と複数人の思考の統合により、新たな発想や構想の広がりが期待されると考えた。
(b) ディルタイとモリソン・プランの教授法から得られたもの
ディルタイの教授理論では、注意と興味の内的状態が重要であるとされており、特に子どもの興味や関心を一定の方向に向かわせること注意(意図)が重要としているが、モリソン・プランでは、既に一連の仕組みは教員の監督下にあると考えられている。
また、ディルタイは、教育の目的は自分で判断し行動する能力の育成であるが、そのためには直感的世界から教授を開始しつつも、各段階での不断の反復訓練を行うことによって様々な思惟過程を生じさせる「論理的操作」が必要としているが、モリソン・プランでも習熟という点を重視しており、「同化」の段階において子どもが学ぶ姿勢を身に付けることを重視している。また、田中氏も「発表」の段階で公共的に使用する能力の育成までも重視されている点に着目している。これらのことから、教育の現場で実践的な力が要求される教員を育成する教授法としては、グループによる学習指導案の作成や模擬授業、そこでの相互評価の結果を次の個々の学習指導案の作成と模擬授業につなげる仕組みは、大変効果的であるといえよう。
本学においては、実習や演習などの体験的学習を重視しているが、体験学習は学習者のプロセスの一契機として、また学習の到達地点として捉える必要があるのではないかと考えている。美術科教育法の学習形態は講義であるが、学習を定着される術として演習内容をうまく組み入れることが必要であると考えている。美術科教育法の指導とは離れるが、教職の必修科目で担当している「工芸基礎」で取り上げている題材に「土笛からオカリナへの進化」がある。基礎的な理論の把握と小ステップの体験学習の繰り返しや訓練によって、技能や技術の獲得とともに、制作過程での考え方、制作の目的などの確認等を通じてモチベーションを向上させながら、自発的な思考を促すことを重要視しており、その有効性もモリソン・プランより再確認することができたことを付け加えておきたい。
(c) 改善したシラバスとワークシート
今回考察した教授法の中で、有効と思われるものを組み合わせた今年度の美術科教育法のシラバスを紹介する。平成25年度の紀要にて、相互紹介シートや相互評価関係の資料については大凡掲載したので、今回は学習指導案の作成について、各自の中学校や高校時代の体験から印象に残った授業を思い出し、その時使われたであろうと思われる学習指導案を予想しながら発表することから始まり、4人のグループに分かれて一つの学習指導案を話し合いながら作成して模擬授業を行うことによって大凡の授業の組み立て方を体験した後、最後に数ヶ月かけて一人で学習指導案を作成し、教職集中講義で各自が模擬授業を行って相互評価する流れである。その際に使用したシラバスとワークシートを次に紹介する。
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