今回、全国の学校を行脚しながら「対話による鑑賞授業」を展開する「旅するムサビ」とコラボする機会に恵まれた。「旅するムサビ」は、「美術による学び研究会」の主メンバーである武蔵野美術大学教授の三澤一実先生が、教職を履修する学生たちと一緒に平成20年から続けてこられた活動である。この研究では、そこに至った経緯や教職実践演習の中で取り組んだ内容などを振り返りながら、今後の「対話による美術鑑賞」の可能性や教職課程への導入などについて考察していきたい。
2 研究目的と方法
(1) 全国各地での「対話による美術鑑賞」の実践例
(2) 武蔵野美術大学「旅するムサビ」とのコラボ
(3) 学校訪問での共同授業による成果と課題
3 研究内容とその結果及び考察
(1) 全国各地での「対話による美術鑑賞」の実践例
私が最初に「対話による美術鑑賞」に興味をもったのは、「美術による学び研究会」滋賀大会(平成23年8月)であった。翌年、第7回美術鑑賞教育フォーラム(平成24年1月)が文科省教科調査官が司会者となって文科省の講堂で開催された。また、その後沖縄で行われた「美術による学び研究会オフ会」inChi-cafe大会(平成24年11月)に参加したが、回を重ねるうちに鑑賞教育の重要性とこの鑑賞方法の必要性を強く感じるようになり、是非本学の教職課程のカリキュラムに取り入れたいと思ったのである。これまで参加した鑑賞教育に関係する大会や取組を紹介しながら、今後の課題や問題点を探っていきたいと思う。
ア 「美術による学び研究会」滋賀大会
平成23年8月6・7日、「美術による学びの輪」をテーマに滋賀県立近代美術館で研究会が開かれた。この美術館は、図書館や地域 文化センターなどが併設された緑豊かで広大な敷地の中心部に位置しており、彫刻の道、子ども広場、夕照の庭など親子連れの姿も見られるゆったりとした環境の中にある。
この研究大会は、当時高知大学教授の上野行一氏が平成20年に代表として立ち上げられた「美術による学び研究会」によるものである。この自主的な研究会は、美術教育関係者なら誰でも入会し参加することができる。最近は、この団体への興味をもつ人達が増え、他の業種の入会も認めるようになってきている。本音で、しかも熱く討議されるこの会の雰囲気は、他の団体とはまた一味違った自由さと真剣さがある。
さて、この滋賀大会では4つのフォーラムが企画されていた。フォーラム1「美術部から広がる 輪」では、堺市での美術部実践交流会「アートレセン」の報告があり、これは5年前から実施されている「アートグランプリinSAKAI」の育成システムとして、美術部員間での交流を目的に行われている。
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