ウ 「美術による学び研究会オフ会」inChi-cafe大会
平成24年11月3・4日に、沖縄の「ホテルゆ がふいん」で行われた大会である。
最も印象に残ったのは、米軍基地の網のフェンスが直ぐ横に見える辺野古の海岸に行った後、名護のビーチに戻って全員が海岸に座り、有名な沖縄の作家が描いたアメリカの国旗と日の丸が一緒にたなびく絵画を鑑賞したことである。
参加者による鑑賞が進むにつれ、沖縄で各地で同様の光景が見られるが、不思議なことに沖縄に住む人達には、写真を見ただけでどの場所に立っている旗だかが分かるというのである。背景や空の空気、旗の大きさなどの違いが微妙に違うらしい。また、この絵を描いた作者も気がつかなかったことが指摘される場面もあり、興味深い鑑賞会であった。この地のこの場所だからこそ見えてくるものがあり、企画された沖縄のNPO法人アートリンクの綿密な計画に敬意を表したい。
この団体は、沖縄県立博物館・美術館、沖縄総合教員センター図工美術担当指導主事を歴任された現那覇市立真和志中学校教頭の前田比呂也氏の助言のもと、2009年6月に設立した。それ以降、沖縄各地の殆どの学校に出かけ、「対話をつなぐ美術鑑賞」を精力的に進めている。
アートリンク代表の宮島さおり氏は、この鑑賞方法を実践する中で、「終わって気づくのは、対話式鑑賞法って励まし合い運動だっ!という哲学。毎回ドラマのような驚きと感動、そしてそれはスタートであって未来には予想もしない展開が待っている・・・そんなドキドキってステキでしょう?」と、アートリンクマガジン(右表紙)で述べている。この機関誌は、沖縄文化活性化・創造発信支援事業補助金によるもので、会の運営では様々な事業による補助を積極的に活用し、継続した研究になるように尽力されている様子を聞くことができたのも大きな収穫であった。
大会のテーマにもあるChi-cafeとは、教職員仲間による妄想できるカフェのことらしい。悩みを共有できる集まりの場である。「本当に悩んでいる人は、責任をもてないので来ないでください」という、なかなかざっくばらんでユニークな報告であった。
実践発表では、宗像市立日の里中学校教諭 高松真理子氏から、3年生を対象に実施した「ゴッホの『ひまわり』を鑑賞しよう」で、絵の中のひまわりを身近な人に置き換えて考えさせる鑑賞方法が、秋田県立西目高等学校教諭 黒木健氏からは、「教育と美術とICT」の関係を図に示したり、対話による鑑賞を「科学的鑑賞と芸術的鑑賞」の側面から考察されるなど、大変興味深い発表であった。
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