制作に行き詰まったとき、生徒がよく質問しにくる。それはうれしいことなのであるが、生徒によっては質問の主旨を確認するために時間がかかることがある。生徒の聞きたいことと違っていたり微妙にずれていたりすると、言い過ぎてしまったりいい足りなかったりしてしまう。
そこで、次のようにアドバイスしてほしい内容をランクで示すようにした。
A ランク … ヒントが欲しい
B ランク … どちらの方がよいか、相談したい
C ランク … 例を示してほしい
D ランク … その他
生徒には、これを実施する主旨を次のように説明しておく。
「本来、ほとんどのことは自分で発見することが好ましい。自分で見つけられた喜びがあるし、自分のものになりやすい。
しかし、それには多くの失敗や経験・時間が必要である。学校では、短時間でたくさんのことを効率的に学ぶために、学習のガイドをしている。実習の授業では、体験することが基本であるから、そのガイドは最小限にとどめたいと思っている。そこで、このアドバイスランクが有効となる。」
A … ヒントが欲しい
これは、望ましい質問仕方である。
できるだけ自分で考えてみたが、どうしても手掛かりがつかめないでヒントを欲しいということである。自分で考えていけるようなアドバイスをしてやりたい。
B …どちらがよいか相談したい
これも、望ましい質問の仕方である。
幾つか考えてみたが、どれが最も適しているか迷っているということである。アドバイスでは、その理由もできるだけ詳しく説明するようにしたい。
C … 例を示してほしい
これは、具体的な答えが知りたいという場合に多い質問だと考えられる。できるだけ複数の例を示すようにして、その中から選択できるようにアドバイスするようにしたいものである。
D …その他
どれにも当てはまらないものである。
望ましくない例として「これでもういいですか」や「これ以上できません」、「どうしたらいいですか」などが挙げられるが、自分の考えをもう少しはっきりできるようにアドバイスしたい。
実際の授業では、Dランクの「これでもういいですか」という質問が結構多く出る。どうせ自分には無理だからというあきらめの気持ちや、自信がなく先生の評価を気にしたり、ここまでやったのだからもう終わらせてくださいと許可を求めたりする場合などがあると思われる。
これらについては、質問の内容がどういう目的で行われているのかをよく確認した上で、実現できる目標を再設定させ、意欲を喚起させる話題を提供するようにしている。
本来、完成したかどうかは自分で決めるべきもので、設定した目標が達成できたどうかは自分が判断すべきものである。しかし、実際には最も多く、そして返答に困る質問の一つである。
A~Dのランク表を黒板に貼って趣旨を説明し、
「君はどのランク?」と聞く
生徒は、自分の質問したいことをまとめ、 「○ランクで、お願いします。」と相談する
この指導方法を導入するようになってから、生徒の望んでいることを把握しやすくなった。また生徒の方も、自分の相談したいことを整理でき、そのことに答えてもらえるという安心感が起こるようである。
対応への時間が短縮できることもありがたいが、受け答えの際の行き違いが少なくなるので生徒との信頼関係が深まることが最も嬉しい。