「立体空間構成」
20センチ四方の木枠を作り、その中に大小幾つかの風船を入れ、石膏を流し込んで固める。風船があったところが虚の空間となった。不思議な形を幾つかに切り分けて再構成する。人の力では簡単に作り出せない曲面が表れ、偶然にできた形の中に重力などの自然の力や法則の上に成立した楽しさが味わえる題材である。
ステンドグラス調のペイントシールの作成
透明の塩ビ版に透明アルコール系絵の具で描画し、ステンドグラス調に仕上げる。また、それらを塩ビ版から剥がすとシールにすることもできる。絵や写真などを転写することもできるので描写力に乏しい生徒にも取り組みやすく、描写用具の扱いも比較的容易である。光が差し込む美術室の窓ガラスに、全員の作品を両面テープで貼って展示した。
「土鈴づくり」二つの方法
粘土を使った 形体験が非常に少なくなっている。準備と後始末に時間がかかることも原因していると思われるが、やってみるとほとんどの生徒が熱中する。原始の血が騒ぐのだろうか。
土鈴づくりでは、小さな粘土玉を新聞紙でくるみ、さらにそれを板状にした粘土でくるんで作る方法と、まず鈴の形を粘土で作り、シッピキで二つに割って中をくりぬいて玉を入れ、ドベで貼り合わせて作るなどの方法がある。ガス窯で素焼き焼成をして、アクリル絵の具で彩色する。粘土による形の基礎を楽しく学習できる題材である。
「自分のシンボルを木版エンボスで残そう」
四年後に移転する学校での実践例である。美術室も老朽化し、白い壁も薄汚れていた。生徒の作品で壁を埋め尽くそうと考えた。計算したら一人当たり10~15cm四方の面積になる。色のない白い作品、エンボス、プレス機、木版、切り出し彫刻刀、シンボル、自分、それらが一つに繋がった。自分を表すシンボルを、10cm角の木版画に彫り、紙に木版の凹凸をプレス機で刷り取る。2枚作って1枚を壁に両面テープで貼り付けて、もう1枚を持ち帰らせる。
斜めから光が当たると、形が浮かび上がる。ギリシャの壁面レリーフを連想する。どうせ取り壊されると思うと、遠慮なく貼れた。4年間でほぼ壁が作品で埋まった。校舎は取り壊されたが、みんなの思い出は永遠に心の中に残ったと思っている。
「全員の切り絵を廊下に展示しよう」
移転を3年後に控えた頃、学校の環境整備の担当をしていたこともあり、廊下の壁の汚れと、薄暗さが気になっていた。
そこで、美術履修生徒全員の作品を廊下に展示することにした。額に入れての展示は物理的に不可能である。画用紙や紙の作品は、壁の湿気ですぐに見苦しくなる。
教材カタログを見ていると、黒のビニールをカットして作る「切り絵」が紹介されていた。これなら湿気の影響もないし手ごろな大きさである。白と黒を基調とした作品は、薄暗い廊下でも はっきりと絵柄がわかる。もうすぐ取り壊すの だから、両面テープで取り付けてもかまわない。
自分の力に合わせて三つのレベルから選べるようにし、新聞の切り抜き(滝平次郎の切り絵)を主なサンプル画像にした。ひとり一人の作品の題名と名前をワープロで印字した名札も取り付けた。興味をもった新聞社2社が取材に来るというおまけもついた。
「学校行事ポスター作り」
学校には体育大会、文化祭、球技大会など様々な行事がある。なんとなく参加しているだけの生徒が多いように思われたので、ポスターを描くことによって、学校行事への興味づけができないかと考えた。校内で行われる行事の中から、自分の関心のあるものを一つ選んで、みんなに積極的に取り組んでもらうように呼びかける。
生徒昇降口などに掲示したところ、学校の様々な教育活動の取り組みが、身近に感じられるようになったと好評であった。