集団指導で気を付けたいこと
集団指導では、皆に同じ考え方で同じように指導するという目的ではなく、人と違ったその人自身の表現や考え方を大切にするという観点が重要である。
集団の中でほめるときは、一般にうまいとされる模範的なものではなく、だれもが共感できるような要素が含まれている場合や、驚くような斬新なアイディアや発想を紹介すると効果的である。
興味・意欲などを喚起するプラス的要素をもつエネルギーや、逆にやる気をそぐマイナス的要素のエネルギーでさえも、全体の中では伝染しやすい。教員自身が極力本音で語りかけ、教訓や押しつけにならないようにし、集団からわき起こるエネルギーをうまく活用できると、援肋も生きてくる。
美術教室での教員の最も重要な役割は、創造的雰囲気を作り出すことであろう。優れた指導者には、それぞれ独自の事前準備の苦心がある。すべてのことを教えてしまおうとしないで、たとえ小さな発見でも、自分で見付けた喜びを大切にさせたいものである。
個人指導で気を付けたいこと
絵を否定することは、その生徒を否定すことと同じであり、絵をほめることは、その生徒をほめることと同じである。
今、この生徒は何を考えているのか、何を迷っているのかを察知し、それらの解決の糸口をつかむために個々に話しかけ、その生徒の世界が開かれるように手助けをしてやることが大切である。そうすることによって自信を取り戻し、描こうとする意欲が高まり、迷っていた生徒も積極的に筆を進められるようになる。
絵が描けなくてじっとしている生徒は、『素直に自己表現ができない』ということを態度で自己表現していると解釈できる。自信をもって熱中して描いている生徒に対して、過ぎた指導はいらないであろう。そばにいて関心を寄せるだけでよく、自然な表現をほめることによって、生徒は自信をもって描き続けるようになっていく。