よく「学ぶ」は「まねる」から始まるといわれる。例えば、書道やピアノ、空手など、習い事の多くはまねることから始まる。そして、それらには「型」があることが多い。学びやすいように体系化され、基本から応用へと発展できるようになっている。
また、伝統的な武道の教えに「守破離」という考え方がある。
「守」は、伝統から徹底的に学び基本を身に付けること、
「破」は、それまで身に付けたものを一端捨ててしまうこと、
「離」は、自分独自の新しいものを生み出すこと、
新しいものを創造するには、これまで蓄積された先人の知恵をまず徹底的に学べということであろう。
美術にも「模写」という方法がある。これなどは、まねるの典型であるが、単に技法をまねるだけでなく、作者の考えや意図を探る方法としても有効である。また、「○○方式」などの一種の「型」も考案されているが、私は、それぞれの良さがあるので、学習者の学習要求や習熟度、到達度に応じて用いたらよいと考えている。
例えば、意欲が極端に乏しい生徒には、興味をもつ話題の提供や、自分でも上達できる可能性があると思える事柄を見つけてやるなどの工夫が必要であるし、そのために「○○方式」が効果的であるならば、活用すべきだと思う。
どんな「方式」や「型」も、すべてに通用するわけではないので、どの部分に用いるかが、指導者の技量にゆだねられているのである。勉強が嫌いな人は多いが、自ら学ぶのが好きな人は多いように思う。
人は、興味のあることは好きな場合が多いし、強いてさせられることには抵抗を示すが、自ら求める学びには意欲を示す傾向があるようである。人は、だれでも多くのことを学びたいと願っているのである。
学習したことを定着させるためによく用いられる方法として、反復練習がある。繰り返し行うことで忘れないようにする方法であるが、さらにそれを推し進めたものとして私は、「学んだことを、人に教える」という方法を推薦する。人に教えようとすると、まずは自分の学んだことを整理しなければならない。また、人に理解してもらえるように、教え方を工夫する必要もある。相手の年齢や到達度に応じて工夫もしなければならない。
人に教えることによって、自らの理解が深まるとともに、定着度が増す。そして、最も嬉しいことは、相手から感謝されることである。
人は、自分が知ったことを人に伝えたいと願っているのである。