次に示すのは、平成13年5月に国立教育政策研究所教育課程研究センターから「評価規準、評価方法等の研究開発(中間整理)」として出された、学習指導要領における第5学年及び第6学年の内容A表現(1)「楽しい造形活動をする(『造形遊び』)」のまとまりごとの評価規準である。
※「鑑賞の能力」は他の3つの資質や能力と一体的に働くため、それぞれの評価規準の中にも含まれる。 |
「造形遊び」の評価では、学習の過程を的確に評価する必要があり、そのためには一人一人の子どもの取り組みや変容をとらえた適切な支援がポイントとなる。中間整理では、さらに新学習指導要領の解説書を基に「評価規準の具体例」が示されている。これらのことを踏まえ、高学年における「造形遊び」の題材を開発した。
(3) 高学年「造形遊び」の題材開発
前回の研究で考察した「遊びと発想の関係」では、私たちは遊びを通じて発想や創造の基礎訓練をしてきたといえ、「遊んでいるときは好奇心が持続すること」「遊びはとにかくおもしろいので熱中できるし、遊びだから失敗しても致命的な事態にはならないこと」「遊びは発想の準備段階とも考えられること」などが分かった。また、子どものときに遊びに熱中できなかった人は、成人しても発想が広がりにくくなるともいわれるほど、遊びが大切なことも分かった。今回の題材開発に当たっては、それら遊びのもつ特性を有効に取り入れるように工夫した。
次に留意した点は、「小さくても自らの発見があること」である。野口悠紀雄氏は「超発想法」の中で、「創造的な発想は突然生まれるものではなく、単純な行為の連続や一部の組み替えからの中から、起こるべき土壌があって生まれる。」と述べている。このことは、昨年度の美術研修講座で京都教育大学名誉教授・日本画家の烏頭尾精氏が、「芸術家の制作と職人の仕事」で話された内容とも一致している。
「造形遊び」に限らず、造形活動を活発に展開する原動力は、自分のものになっているという手応えや実感であろう。職人は、連続的で作業的な行為の積み重ねの中で、カンを磨き、技を磨いていく。この作業的な行為には、続けても疲れにくいという性質があるように思われる。筆者の経験では、まったく新しいものを創造する場合に比べて、作業的な工程が多いほど集中力も増し、また新しいアイデアも生まれやすいと感じている。このような状態を「マラソン効果」と名付けた。
マラソンを続けていると、最初のころは苦しいが、習慣化する頃には逆に走ることが心地よく感じられるようになる。今回の題材開発に当たっては、このような「マラソン効果」を生かし、基礎的・基本的な技能を確実に身に付けられるようにするとともに、自ら学び、自ら考える中で豊かな発想が生まれるように考慮した。
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