イ この題材の特徴と指導のポイント
この題材で最も大きな役割を果たすのが、香りや手触りの良いヒノキの端材と速乾性の木工ボンドである。特に製材所から無料で入手できた国産のヒノキの端材には、発想を広げるための魅力が秘められていた。それは、端材の特徴である寸法の不揃いである。一般的には、寸法が一定の方が形をつくりやすい反面、いかに寸法通り正確につくり上げられるかが中心になったり、組み合わせのパターン化が起こったりして発展性が少なくなると思われる。
端材は、1つ1つの大きさが微妙に違うので、いろいろと組み合わせを試しているうちに、これまで思い付かなかった方法を見つけられることがある。それが他人にとっては常識的なことでも、本人には新たな発見であり、大きな喜びである。自分で見つけられたことがうれしいのであり、そのような体験を通して理解し身に付いたことは、生涯を通して生きて働く力となる。
このような経験の積み重ねによって、自分にもできるという自信が生まれ、次へのチャレンジへとつながっていく。この材料には、そのようなプラスサイクルへの展開の可能性を秘めている。
ウ 同材料用具を用いて実施した研修講座や実践事例から
今年度は、残念ながら本題材を高学年で検証することができなかったが、研修講座や指定研究員の研究授業などを通じて、同材料用具を使った題材をいくつか試みたので紹介する。
(ア) 新規採用幼稚園研修講座 「表現」-ひみつ基地をつくろう-(平成13年6月15日)
幼稚園では、様々な遊びの中で豊かな感性や表現する力を養うことがねらいであり、小学校の「造形遊び」とも通じている。
各班4~6人の10班に分かれ、全班共通テーマで行った。
40×60㎝のベニヤ板を使ったので、各自がつくったものを持ち寄って再構成するグループや、形が上に伸びていくタイプのものなどが主に見られた。班別での活動では、最終の形が決定されて進められていくというよりは、テーマから思い浮かぶイメージを互いに確かめ合いながら造形活動が行われていた。
(イ) 家庭教育部講座 親子のふれあい「表現」-住んでみたい家-(平成13年6月28日)
約30名が、個人又はグループで行った。講座の目的が、家庭での「親子のふれ合い」なので、このテーマを
設定した。 20×30㎝のベニヤ板上での制作のため、積み木感覚で家を組み立てているケースが多く見られた。ある受講者が、家族の反対で取り付けられなかった螺旋階段のある家を、熱心につくっておられた姿が印象に残っている。自己の願望を造形に託した例で、ここでは他にも何点かその傾向が見られるものがあった。
(ウ) 図画工作科研修講座「高学年の造形遊び」-「ひみつ基地」大建造作戦-(平成13年8月9日)
今回、開発した題材に基づいて実施した。1班4~6名の6班に分かれ、全班共通テーマで行った。教育研究所の思い思いの場所での造形活動となった。設置する場所をイメージして制作する姿も
見られた。ディジタルカメラを使って活動を振り返える自己評価法を取り入れ、更にそれを使ったグループ発表を行い、他者評価を試みた。「互いの活動状況を画像で知ることができたので、振り返り学習の参考になった」との感想があった。
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