d ブロンズ像の状態の把握と課題
平田理事長によると、ブロンズ像は49年前の本学の開設後暫くしてから設置されたが、その後酸性雨等により痛みが激しくなったので15年程前に塗装による補修が行われたようであるが、そこで二つの問題が生じたと考えられる。一つは色である。ロダンのブロンズ像には黒に近い濃い緑の着色をされることが多いが、日本では室内展示が多かったこともあり茶色系が好まれてきたのでこの時の補修もそれを用いたようである。次に着色方法であるが、ブロンズ像の場合は青銅を腐食液によって発色させる方法を用い、色の違いは腐食液の種類によって決める。しかしこの補修では塗料が用いられたようで、皮膜での着色になっている。これらの結果、元の作品とあまりにもイメージが異なるため、塗料を剥離しようとしたが完全に取れず、現在はそれが鉄さびのように見えている(写真右)。また、塗料を取ろうとしたときに付いた傷が更に酸性雨等によって腐食され、黄緑色の緑青の跡が幾筋も流れ痛々しい様相を呈している
大分県での研修の際、緑青に蜜蝋が染み込み黄緑の発色が少しおさえられると聞いたので、今回の修復では傷を付けないように茶色の塗料を落とすために、環境に配慮した洗剤による洗浄に留め、これ以上酸性雨等によって腐食が進まないように蜜蝋の保護膜を張って艶出しをすることにした。
イ 作業前の記念写真
参加した学生は、写真の右から専攻科2回生のデザインコース2名と、専攻科1回生のデザインコース2名及びクラフトコース2名の計6名である。授業で彫刻についての基礎知識は理解したが、実際の修復作業に少し緊張気味である。
専攻科1・2回生
ウ 作業工程
① リグロインによる洗浄 4月22日(水)2限
鉄錆のように見える茶色の塗料は、人工漆のカシューやポリサイトと考えられ、堅牢な皮膜を形成しているのでシンナー等の有機溶剤で剥離するのが適切と考えられるが、身体への負担が大きい。別の溶剤として、染み抜きに使うベンジンが思い浮かんだが、今回蜜蝋を溶かすのに用いるリグロインもベンジン系であることに気がついた。そこで、リグロインを刷毛(写真右)で薄く塗り、布でぬぐってみると少しではあるが茶色の塗料を取ることができた。 そこで、1年と2年が交代して2度の剥離作業を行った後、水道水で洗浄し自然乾燥させた。 写真の「作業前」と「塗装剥離作業後」から、鉄さび色が随分取れていることが分かる。
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リグロイン添付 | 水で洗浄 | 作業前 | 塗装剥離作業後 |
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