PDF版→ H29年度版 美術科教育法における効果的な教授法の考察1 -これまでの教育分野の研究から探る-
美術科教育法における効果的な教授法の考察1
-これまでの教育分野の研究から探る-
中 川 賀 照
Nakagawa Yoshiteru
要 旨
美術科教育法の指導において、学生の主体的な学びを導く効果的な教授法を導入したいと考え、今回はこれまで研究されてきた教育分野における様々な教授法について、美術教育の視点から再考しながら有効な手立てを探ることにした。そして、それらの考察を基に今後は更に広く教育分野以外からの教授法も対象にして考察していきたいと考えている。
キーワード:美術科教育法、教育分野における様々な教授法、主体的な学び
1 はじめに
これまで長い間美術教育に関わってきて、大切にしてきたことがある。それは、美術教育は美に関する教育を行う教科であるが、美を教える教科ではないということである。このことは、「第2回美術と教育を考える会」のシンポジウムで「感性とはなにか」という討論の際、パネリストの一人である東京芸術大学教授で現代美術家の日比野克彦氏が述べた「美術は進化しない」という発言や、それを受けた文化庁長官の近藤誠一氏の「教育の現場では、進化していく科学の新しい知識を与え続けていかなければ社会は進化しない。
しかし、美しいものを見て感動する心は、もともともっているものだから、それを教える必要はない。大切なことは、それをどのように引き出してやるかということである。」からも、教えること以上に気づかせることの重要性が分かる。 しかし、美術教育においては、気づかせることに重点を置いた指導には教員の力量が相当必要である。美術に関心がある学生たちは、専ら制作活動を通して自己の感性を磨くことに専念しているが、他者と関わりながら共に学んだり、時にはリーダーシップを取りながら意見をまとめたりする機会が少なく、苦手な者が多いように感じる。気づかせることを可能にする指導方法には、他者との関係を図るコミュニケーション力が不可欠であり、またそれらの資質をどのようにして身に付けられるようにするかが重要である。
前回までの研究では、自他による相互評価システムを導入し、他者の力を借りて自分の力量を俯瞰しながら見通しをもった学習目標の設定や教職適性への判断に役立てるというものであった。
今回は、これまで行われてきた教育に関する教授法について、美術教育を進める視点で再考しながら、学習者の主体的な学びを誘発する教授法について考察し、そして次回は教育分野以外からの視点で考察を加え、最終的には「様々なタイプに応じた教授法」に繋げていきたいと考えている。
2 研究の方法
(1) 教育に関する教授法の歴史から探る
(2) 美術科教育法における効果的な教授法の在り方
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