(d) ディルタイの直観教授
ディルタイ(1833-1911)は、哲学の目的は「人間精神の陶冶にこそある」と述べ、直観教授の最高段階は単に外的対象によって知覚が呼び起こされるのではなく、子どもの内面性の自覚が相即する段階としている。
ディルタイは、子どもは興味をもっても自己の興味の中に閉じこもり、熟練をいやがるものであるとし、ヘルバルト(1776-1841)と同じく子どもの我意を問題としているが、独自の興味概念を提示し文化的教育と結びつけようとしている。
興味には、外的対象の表象から引き起こされる「直接的興味」と、表象連関に内在するものではなく我々の目的との意図的結びつきによって表象連関に付与される「間接的興味」があり、この2種類の興味に応じて2種類の「注意」が生じるとしている。
第一は、直接的興味に対応し表象によって喚起される「無意識的注意」で、「意志」が介在することはないとし、第二の「優位的注意」は間接的興味に対応して生ずるが、これは対象に向けられた意志の緊張から生まれるとしている。単なる感覚的対象からの触発のみでは、我々の態度は受動的であり、主体的ではないというのである。文化的遺産の継承には「意志」がいるということであり、子どもの「意志」を形成することの重要性を説いている。
ディルタイは、さらに意思形成のための4つの契機「競争心」「報償」「罰」「学習目標と人生の目標の顧慮」を提示し、更に感覚内容として「合致」「区別」「分解」「結合」などのプロセスがあり、「分解」「結合」から「関連づけ」が生じることによって更に複雑なプロセスとなるというのである。
こうして「知覚」「判断」「概念」「想像力」が形成されるが、この基礎となるのが「意志」であり、意志が現実の再現に向けて協議することで、基本的な論理的操作が生ずるとしている。課題を解くということが、有効的に生きた実践的知識へ移行していくのでなくてはならない。
田中潤一氏*(6)は『直観教授の意義と方法』で、特に人間の思考能力の発達は、対象が私たちの感覚を触発するとき、知的能力を自己成長させようとしたときに生じる内面的衝動が「興味」であり直観を知識へと高める原動力と考えられ、学習者の興味が持続するように働きかけることが教育者の役割であるとしている。さらに、子どもが直観として受容したもの(興味)を、育てる教授法は単純でなければならないとし、それは全ての子どもに等しく知識を身に付けさせることが重要であるからで、「興味」を育てる教授法はできるだけシンプルな方法が望ましいとしている。
「意志」は物事を成し遂げようとする積極的な志のことで、「動機」や「意欲」、本学の教育理念である「やる気」などとも密接に関わっており、学習を向上させる最も重要な要素であると考えられる。
(e) デューイの問題解決学習
問題解決学習は、これまでの講義を中心とした観念的な知識の伝達とは異なり、日常生活の中で出あう具体的な問題を教材として、その問題を主体的能動的に解決する問題解決の過程を通して法則の理解や科学的思考の方法・能力の習得を図ろうとする実践的な指導法である。
問題解決学習では、問題解決の過程にみられるこのような順序に従い授業を進めることになるが、子どもが主体的で効果的に学習しているかどうかに留意しながら指導する必要がある。
長所として、関心のある問題による学習に対する動機づけ、自発的な学習を促す、思考力・創造性の伸張、実践的な問題解決力の獲得、知識と経験の総合的な獲得、集団的問題解決学習による社会的特性の育成等が挙げられている。
– 4 –