短所としては、課題選出などの指導の難しさ、指導時間の増加、自由な思考活動の尊重による場当たり的な学習のおそれ、学習の管理の難しさ、系統的な知識や基礎的な技能の習得がされにくい、理論的な面の不足や材料入手の難しさ、集団的学習での能力差による難しさなどが指摘されている。
そこで、デューイ(1859-1952)は、これらの長短や問題点を克服するため問題解決の過程を『思考の方法』*(5)で次の5段階に分析し、その指導法に活かせるように考えた。
1 問題の意識化 | •何が問題か、どこに問題があるかを気づかせるように指導しているか。 •子どもの経験と結びつけて問題意識を引き起こしているか。など |
2 問題の明確化 | •解決の目標は何か、答えとして何を出せばよいかを考えさせるようにしているか。 •条件として何が示されているかを明らかにさせているか。など |
3 仮説の発見 | •現在の問題を解く上に必要と思われる資料、アイデアを集めさせるか。 •集めた資料、アイデアが必要かどうかを評価させるか。など |
4 仮説の意味の推論 | •前述の仮説が適切かどうか筋道を立てて考えさせるか。 •いくつかの試案がある場合には、比較検討して、一つの解決を導き出すように指導しているか(集中的思考をさせる)。など |
5 仮説の検討 | •推論によって正しいとされた仮説を観察や実験によって確かめさせているか。 •正しいことが実証されれば、それをまとめさせ一般化できるようにさせているか。など |
これは日本の「総合的な学習の時間」での課題解決学習の基礎となった考え方で、美術教育の制作過程においても活用できる手法であり、短所を最小限にすることによってアクティブラーニングの考え方にも繋がると思われるので大いに参考にしたい。
(f) ツィラー、ラインの五段階教授法
日本では、学制が発布され、ようやく学校教育活動が展開される中、どう教えるかという教授法に教員の関心が集まった。そんなとき、主導したのがツェラー(1817-1882)とライン(1847-1929)の5段階教授法である。
先のヘルバルトは、子どもに一方的に知識や技能を教え込むのではなく、興味・関心をもたせるための教員の教育活動を重視した教授法として「明瞭・連合・系統・方法」の4段階を考えたが、ツェラーは「明瞭」を「分析・総合」の二つに分け、更にラインが「予備・提示・比較・総括・応用」の5段階に定着させた。
予備 ‥ 現在の導入と同じ。新しい概念を得ることに必要な既有な知識を想起させ、学習への積極的な態度をつくること。 提示 ‥ 新教材を提示すること。 比較 ‥ 予備で想起した知識と提示によって新たに獲得した知識を比較し、両概念を結びつけること。 総括 ‥ 予備・提示・比較によって獲得した知識を体系化すること。 応用 ‥ 体系化された知識を具体的事実に適用すること。 |
『教職課程 Add comments .11月』のWelcome to CsideNet*(8)によると、この教授法が明治期に教員の関心を引いたのは、それまでの機械的記憶に陥っていた反省によるとしており、子どもの学習心理に立脚した教授法として教員の支持を得、その後の授業に大きな影響を与えたが、一方で80年経った今尚、機械的記憶に陥った授業が少なくないのは反省が足りなかったのだろうかとも述べている。
現在の授業形態や学習指導案にも、「導入する」「展開する」「深める」「まとめる」などの段階的な用語が使われており、ラインの理論が受け継がれていることがわかるが、「導入」「展開」「まとめ」はよく使われるが、「深める」を入れることにより学習目標がより明確になるように思われる。
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