(i) ウォシュバーンのウィネトカ・プラン
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2013年4月8日 19:12)* (12)によると、ウィネトカ・プラン(Winnetka Plan)は、アメリカのイリノイ州ウィネトカの小学校で行われた教育的な実験である。シカゴ大学の実験学校での経験を踏まえた前述のジョン・デューイの著作から触発されたカールトン・ウォッシュバーン(Carleton Washburne )が考え出したもので、教育的な焦点を子どもたちの創造的な活動や社会的スキルの発達に当てはめていこうとするものであった。
カリキュラムは、各教科を共通科目の「一般共通科目」(common essentials)と「創造的集団活動」(creative group activities)に分け、「一般共通科目」では、生徒たちに教科内容の学習と習得を求めたが、「創造的集団活動」では生徒たちの関心に応じた取組が行われ、厳密な達成目標や到達度目標も設定されなかったという。この教育プランは、アメリカ国内を問わず世界的に広まり、カリキュラム設定の焦点を再考するきっかけになったことで知られている。
これらのことから、美術教育を考える上でもこの二つの視点で教育内容を見直すことは有効だと考えられる。例えば、「一般共通科目」としては共通認識として持つべき学習内容の活動を、「創造的集団活動」では自由な発想や構想ができる活動などに分けることが考えられる。また、それらを交互に繰り返しながら進めるとより効果的であると思われる。
(j) ペーターゼンのイエナ・プラン
「ベビカムまとめ」(http://matome.babycome.ne.jp/)* (13)には、子どもの幸福度世界一といわれるオランダの教育法の一つにイエナ・プランがあるとし、リヒテルズ直子氏が次のように紹介している。イエナ・プランは、ペーターゼン(1884-1952)によってドイツのイエナ大学付属学校で行われた学校教育計画で、学校は子どもと教員と保護者とからなる共同体とみなし、子どもが大半の時間を過ごす場としてリビングルームの環境づくりを強調する。
特徴としては、学級は異年齢の子どもたちによって構成され、通常は3学年にわたり、学級はファミリー・グループ、学級担任の教員はグループリーダーと呼ばれる。時間割は教科別で作られず、学校での活動は、会話・遊び・仕事(学習)・催しという4つの基本活動を循環的に行う。
ひとつの教室には3学年の生徒が一緒になり「根幹(ファミリー)グループ」を作る。その中で、生徒はさらにテーブルグループに分かれるが、必ず3学年の子どもたちが一緒になって勉強する。子どもたちは、3年間を同じ教室の同じグループリーダーの下で年少・年中・年長の三つの立場を経験しながら過ごし、それを繰り返しながら小学校を卒業する。こうすることによって、家族の兄弟関係に似た、年齢差による立場の違いを体験できる。これは、将来、社会に出たときに相手の立場を理解して行動するための準備と考えており、またこうすることによって同年齢学年性に起こりがちな、できる子・できない子の固定化を防ぎ、子どもの個性や真の意味のリーダーシップが生まれるとしている。
イエナ・プラン教育における教室での学習活動では、サークル対話(車座になって話し合う)という形式が、繰り返し使われる。特定のテーマを決めずに自由に話し合う「オープン・サークル」、前もってグループリーダーや一定の子どもが話題を準備した「準備サークル」、グループリーダーが何かを皆に伝えるためのサークル、何かを一緒に見たりそれについて話し合ったりするサークル、観察サークル、報告サークル、自由作文の朗読サークル、テーマ学習サークルなどがある。サークルには、グループリーダーも加わり、子どもたちの対話のファシリテーターの役割を果たす。
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