4 研究内容
(1) 創造的発達過程にっいて
ア 創造的活動の発達欲求と心理的発達
美術教育の名言」 より抜粋
イ 高校生の精神的発達段階
青年期の危機といわれる中学校時代は、 自我の意識が強くなり、感情の起伏が激しくなったり友達との敵対感情も生まれたりするなど、 大人への転換期であり、 自我の確立を目指す最も不安定な時期でもある。 巧みな手工によって視覚的な再現を試みたりするが、 それがかえって創造的表現能力のつまずきとして作用することが多い。そんな時期を経て、 自己の理想的思考と抽象能力が一層高まる高校時代を迎える。 リァルな表現に加えて表現の多様化と深まりが進む。 しかし、 中学校時代に受けた心の傷の深さが、 容易に回復しない場合もある。 写実的、視覚的な表現への失望から、創造的活動全体に意欲を失ってしまうのである。
屈折から生まれた暗い自己表現よりも、 夢と希望にあふれた輝かしい自己表現になるよう手助けをしたいものである。
シュ夕イナー教育の考え方14歳から21歳までの教育で一番大切なことは、因果関係に関する様々な問題を学習できるように
することと、 外に対する適応力を身に付けさせることである。 ドラマチックな変身が15歳ごろに起こる。 そうでない場合はどこか心の病が生じていると考えられる。学習の過程で、十代の子どもはこの世に生きることの意味を実感できるようにすべきである。
・文部省初等中等教育局高等学校課遠藤友麗教科調査官の所見
人間は経験しないことは頭に浮かんでこないし、 心にも感じない。 感性は育てなければ豊かにならない。 感じようとする心で観なければ何も見えてこないのである。 最近、 描写にイラスト画などが多くなっているのは、 自分で体験することが少なくなってきたことが要因と考えられる。 10歳前までの豊富な経験と楽しい夢が、 青年期の観察的、 感性的な経験の豊かさを大きく左右する。
ウ 創造力が育ちにくいわけと、創造の3つの夕イプ
創造の前には常にイマジネーションがある。 i現在、想像力のよく伸びる幼児期に、母親から昔話や童話を聞かされることが少なくなる傾向がみられ、 お話を頭の中で視覚イメージに置き換える訓練ができていないことも創造力が乏しいといわれる原因と考えられる。 一般的に、 思春期になると子どもらしい自由な表現が少なくなってくる。自分の作品を批判的にみるだけでなく、自分自身に対しても批判的になる結果、 今までの子どもらしさが消え、 概念的な面がウェー トを占める。 子どもの創造性がある時期を境にして急速に変貌していく。 その時、 知的なものを早く子どもに教え込もうとすると、その代償として何かを失うことになる。
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