・静かにじっくりと作品を見ること
・言いたいことがあれば、手を挙げて順番を待つこと
・大きな声で、みんなに聞こえるように話すこと
・できるだけ分かりやすい話し方を心がけること
・他の人の発言をよく聞くこと
その後、私がファシリテーター役を務め、シャガールの「私と村」を「対話による鑑賞」によって行ってみせた。使った資料は、作品画像を1メート四方に拡大プリントしたもので、今年度ある学生が教 育実習の研究授業で実際に行った際に指導教官に作成してもらったもので、大きくて見やすいので教育実習での体験を後輩に語る教職集中講義でも使われた。
ここでは、「ふくい鑑賞授業研究会」の進め方を用いた。それは、最初に2分間作品をよく観察し、気づいたことをメモに取る。そして順に発表させ、発言のポイントを板書しながら、類似の意見をまとめたり、相反する意見や感想についての考えを比較したりしていく方法である。色や形、登場するモチーフなどから多くの推理がなされ、鑑賞が深まっていった。
最後に、作品について私の方から簡単に解説を行ったが、これはファシリテーターが事前に作品について精通しておくことの重要性について知らせるためで、実際の授業では絵についての解説をなるべく避けた方がよい。それは、自分で見て、考えて、発表するという行為の妨げになるからで、何か正解があるのではと思いながら鑑賞すると、発想が広がりにくくなってしまうためである。
b 第2回目 11/18月 新しい鑑賞授業の在り方2
第2回目では、ファシリテーターの役割と考え方、進め方などについて理解するため、アメリア・アリナスのティーチャーズキットの「授業の進め方」の項を読みながら解説していった。
それは、まず静かに作品を30秒ほど見つめさせ、見たもの心に浮かんだことを「この絵の中で何が起きているのでしょう」という発問を合図に発言させ、時にはそう思った理由を聞いたり他の子どもたちに考えさせたりしながら鑑賞を進める方法である。
注意する点として、子どもたちの発言との関連のない質問や特定の考えを引き出そうとしたりせず、ハイやイイエなどの単調な返答になる質問に気をつけることや、これまでの鑑賞でよくある技法 や作者の意図を尋ねることも不適切であることなどが挙げられている。また、途中で子どもたちの発言を要約したりまとめたりすること、異なる意見の関連性に注目させたり、時にはコメントを付ける ことも子どもたちの集中を促すために必要であることなどが述べられている。
「旅するムサビ」との共同授業では、ファシリテーターと作者の二つの役割を体験しておく必要があると考え、くじ引きを行って表2のスケジュールを組んだ。様々な鑑賞スタイルを体験するため、スケジュールでは実物の作品、プロジェクターによる投影画像なども体験できるように考えた。
第1回目は、5番の学生がファシリテーター役に決まったので、こちらで準備していた宮本三郎の作品を使って鑑賞を進めてもらうことにした。
作品は、画集からA3サイズに拡大コピーしたもので、二人に1枚ずつ配布した。約25分間での鑑賞であったが、作品を黒板の真ん中に掲示し、二人の登場人物についての発言や意見を左右に分けて書いて対比させたり、発言個所を矢印で示したりし、突然当たったにも関わらず機転の利いた工夫が見られた。また、最後にまとめを要請された学生が、それまでの発言に加えた洞察が笑いや驚きを誘発する場面などに繋がり、今後の展開が楽しみとなったスタートであった。
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