c 第3回目 11/25月 模擬授業(対話による鑑賞)1
今回からは、作者役とファシリテーター役が一組となって25分間ずつ鑑賞を進め、全ての学生が二つの役割を体験できるように進めていく予定である。
まず最初に、私が作者役を務めた。3年前に作った「前へ」というテラコッタ作品のエスキースである。三人の鳥らしきものが同じ方向に向かって進もうとしている姿を作ったものであるが、鑑賞者からは、最初に「今にも動き出しそう」、「体が筋肉質」、「体は人間で頭は鳥」、「体の割に翼が小さいので雛のように成長途中を表しているのでは」等の感想が出た。
ファシリテーターが、「今にも歩き出しそう」という発言を取り上げ、どの辺でそう感じるのかという問いを返し、「前傾姿勢」という発言を導き出したのをきっかけに、作品の方向性に注目が集まり、「制作意図は成長している、生きているということを表しており、顔つきが大人びているように感じるので、大人のようであるがまだ未熟なものが、がむしゃらに目標に向かって前進しようとしている様子ではないか」という意見にまとまった。最後に、「なぜ3羽なのか」「なぜ3羽にする必要があったのか」という疑問が出、作者に発言が求められた。ここまでで、約20分の経過である。
そこで私からは、数年前に鳥を手がけるようになったきっかけやそのときの気持ち、最初は1羽の仕草、そこから2羽、3羽、7羽と組作品に発展していったことなどを作品写真を見せながら説明し、鑑賞が終了した。
二番目は、クラフトデザインの学生の作品である。レザーで半抽象的な心象風景を描写した作品である。A3のパネルに、様々な染料で染めた皮を張り付けてあり、作品の中心に大きな目を描写している。皮染めのため、多くの色を用いているが少し地味な風合いである。
鑑賞者からは、真ん中のリアルな目と周辺の抽象的な表現との表現方法の違いや、素材の質感や扱いについての質問などが出て鑑賞が深まっていったが、鑑賞者の発言をファシリテーターがそのまま文章で板書していったため時間がかかり間が開く場面が何度もあった。それを見ていて、要約する必要があると感じたのか、次のファシリテーター役の学生は発言を単語で板書する方法を用いるようになった。
三番目は、人物の石膏頭像である。作者は本校の卒業生で、教職免許を取得するため聴講生として来ている。作品は、数ヶ月前に他の大学で制作したものだ。二十代前半の女学生がモデルで、髪を後ろで縛り、いかにもスポーツが好きな元気で明るそうなモデルの表情を捉えた作品である。 鑑賞者からは、「運動部に所属しているのではないか」「横顔と正面で印象が違って見える」「年齢は若いようにも見えるし、少し年配にも見える」等の発言が出た。
作者は、日本画が専門だったので、塑像を作るのは初めてであったこと、石膏取りは15回の授業の後、夏休みに希望者と一緒に行ったこと、自分の作品に対するみんなからの感想に興味をもったことなどを述べた。
今回出た作品は、私のものを除いて、学校の課題とし て制作されたものだったので、作者の意図や心情などを深める対象にはあまり適していないことや、作者が目の前にいるので気を遣って褒める傾向が見られるなど、課題がいくつか残った。
– 11 –