鑑賞者からは、この絵は日常にないカラフルな色の組み合わせで描かれており、少ししんどくなるという感想や、コラージュ技法についての話題などが出た。ティチャーズキットは、3作品を1セットにして鑑賞を進めるように作られているが、時間の関係で1枚だけの鑑賞になってしまったので、3作品を通した時の鑑賞者の反応を見てみたい衝動に駆られた。
二番目は、日本画コースの作品で、一人の男子立像である。鑑賞者の最初の発言が「この男性はイケメンだと思う」というものだったので、大きな笑いが起こった。
その後、描写場所や季節などが話題になったが、最後に作者が明かしたモデルについての話が驚きの内容であった。卒業制作の絵のモデルを探していたところ、通学電車の中で好みのイケメン男性を見かけ、思い切って声をかけて頼んだのだという。男性は、他大学の4回生で教員を目指しており、採用試験に合格したので来年度から務める予定で、それまでは時間があるのでモデルを引き受けてもよいということになり、3度来てもらったという。鑑賞者の発言が見事に的中し、みんなが驚いたのであった。
三番目は、クラフトコースの作品で、四角いオレンジ色の箱の上に、銅版を打ち出して作ったと思われる半球形の物体が乗っており、その裏面と四角い箱の表面には繊細な模様が糸を貼って描かれている。
鑑賞者からは、フォルモ粘土で作られた立方体の箱と銅版で作られた球体との対比、質感などについての話題が多く出された。銅版を打って絞ったことがある学生は、その難しさに触れ作者の労をねぎらっていた。
作者からは、キノコを想定して作ったが、上と下の材質の違いに関連性をもたせるために糸を貼り付けたこと、上の蓋を開けたときに色の変化とその糸の模様が出てくる驚きを狙ったことなどが語られた。このように、実際に手に取って裏側を見たり、違った組み合わせを試みたりすることができる点が、実物の良さである。
g 第7回目 12/16月 模擬授業(対話による鑑賞) 4
まず冒頭で、次の授業のポイントについて解説した後、三組の鑑賞を進めた。
2 三つの原理
・〔受容〕発言を受容すること
・〔交流〕発言から対話を組織化すること
・〔統合〕発言の向上的変容を促すこと
一番目は、ティチャーズキット②小学校(5・6年)用の中から、トニー・アウスラーの『ピンク』と斉藤真一の『さすらいの楽師』である。『ピンク』は、蛙のようなシルエットのスクリーンに、女性の目と唇だけが大写しになった少し不気味な作品である。
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