イ 「対話による意味生成的な美術鑑賞教育の開発」報告会(第7回美術鑑賞教育フォーラム)
平成24年1月21日(土)22日(日)、文部科学省講堂に於いて、平成21-23年度科研 研究種目 基盤研究(B) 研究課題名「対話による意味生成的な美術鑑賞教育の地域カリキュラム開発(課題番号21330204)」の最終報告が、第7回美術鑑賞教育フォーラムの形で行われ、これに参加することができた。研究代表者は、帝京科学大学こども学部児童教育学科教授の上野行一氏、研究分担者は一條 彰子氏、国立教育政策研究所教育課程センター・教科調査官の岡田京子氏、前教科調査官で聖徳学園大学教授の奥村高明氏、武蔵野美術大学教授の三澤一実氏である。
府中市を代表して発表された大杉健氏と武居利史氏の地域カリキュラム府中市プランでは、小学校低学年でのパブリックアートや触覚や動作による鑑賞授業について、中学年ではデジタル作品のファシリティーターによるストーリーの発見について、高学年では写実や心情、自分なりの見方や感じ方について、また体育館に展示した全校児童の作品(家庭科と合わせて1700点)の異学年間での鑑賞(6年生が4年生をガイドする)について、中学校ではワークシートを使ったグループ活動を、また小中の交流授業では、小学生が「なりきり作品」を保護者に見せ、その後保護者が本物を美術館で鑑賞する方法や、友達の感想を見てから本物を鑑賞する方法など、様々な研究が行われていることが報告された。課題としては、普段の授業の中で楽しく鑑賞できる機会をもてるようにする方法や中学校での鑑賞の難しさについて、また美術館では、作品のストックの確保、学校へのアプローチ、幼小中高大への広がり、教育行政との連携などが挙げられた。
北九州市からは、太田祐司氏、都留守氏、那須孝幸氏らが福岡県北九州市プランについて発表された。北九州市美術館では7000点の作品の中から鑑賞に適した作品を実践者が選定、美術館からバスを出してもらい、子どもたちと話ができて引き出せる学級経営がうまい人達の、小10名、中2名、 高2名、大5名がスタッフとなり、ギャラリートーク「見つめる、感じる、考える」を実施しており、子ども達の発達段階に沿えるように次の各点に留意していることが報告された。
小学校低学年 | 形と色、表し方の面白さ、材料の感じから |
中学年 | 感じたこと、思ったこと、いろいろな材料、形と色との組み合わせから |
高学年 | 表し方、表現の意図や特徴、動き、奥行き、造形的な要素から |
中学校1年 | 美と機能の調和、生活における美術の働きから |
2年 | 自然のよさ、日本の美術のよさから |
鑑賞トークでは、前半後半に分けてそれぞれ「広げる」「深める広げる(まとめる)」に重点を置くようにし、学校で学習指導案があるようにギャラリートーク案を作って模擬トークができたらと考えていること、またトークの際には次の2つの言葉の使い方に着目し、「何に見えるか」は全体を、「何が見えるか」は部分を示す言葉と使い分けていること、また鑑賞の仕方では、作品の輪郭を指 でなぞる、近づく、離れるなどの工夫をしているとのことであった。
シンポジウムでは、須玉中学校鷹野氏の司会で、文科省教科調査官の岡田氏や前調査官奥村氏などの16名(イラスト)によるディスカッションが行われ、今なぜ鑑賞なのかについて熱心なトークが繰り広げられた。
二日目は、「対話によ る美術鑑賞の現在」というテーマで、全国各地で精力的に活動されている5人の方達から報告があった。
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