野口悠紀雄氏は、「超発想法」の中で、発想を生み出す基本5原則として次のことを挙げている。
① 発想は、既存のアイディアの組み替えで生ずる。模倣なしに創造することはで きない。
② 強いモチベーション(動機付け)が必 要である。
③ データを頭に詰め込む作業(勉強)が まず必要である。
④ アイディアの組み替えは、頭の中で行 われる。
⑤ 環境が発想を左右する。
野口氏は、創造性のある人とない人とのたった一つの違いは、「創造的な人々は自分が創造的だと思っており、創造的でない人々は自分が創造的でないと思っている。創造力は生まれつきの能力ではない。」と述べている。
そして、脳の眠っていた部分を刺激し活性化させるためには、視点を変えたり、ルートをたどって考えたりできるように、次のことが大切としている。
・ 逆の立場から考えてみる。
・ 二つの要素を取り出し、組み合わせを考えてみる。
・ 別の考えに接触してみる。
・ 特殊なケースを考えてみる。
さらに、新しいアイディアを出すためには、本題から離れてわずかな「ずれ」を生じさせる必要があるとも述べている。
普段、私たちは文章を書くとき、書きながら考えている。同じように、絵や彫刻の制作では、描いたり作ったりしながら考えていることが多い。創造は試行しながら行われるといえる。
頭に情報となる材料が詰まっていれば、環境が少し変わることでアイディアが生まれやすい状態となる。そんな場や状態として、散歩、風呂、ベッド、運転中の車の中などを挙げている。私の場合、たまに乗る電車の中で新しいアイディアが浮かぶことがよくある。
それでは、これらの状態を授業の中でつくり出すにはどうしたらよいだろうか。
例えば、グループ活動によって複数の考え方を参考にできるようにしたり、授業の途中で気分を変えられるように場所を移動したりするとよいかもしれない。特定の相手だけとの付き合いでは新しい発想が生まれにくくなるので、美術の授業でも席替えを定期的にしてはどうだろうか。
また、思い付いたアイディアを忘れないように、メモ用紙を教室や校内のあちこちに準備しておくというのはどうだろうか。「ちょっと点検タイム」などの時間を授業の途中に設け、他人の意見を聞いたり自分のものを客観的に見たりできるようにすることも考えられる。
学内に、ポプラ並木の散歩道がある大学があると聞く。アイディアは、授業中などの堅苦しい場所ではなく、みんなと雑談しているときなどのリラックスした雰囲気の中で生まれることが多いので、そんな雰囲気づくりを心掛けることが重要である。