暖かい素焼きの風合いに魅せられて、テラコッタを始めましたと言いたいところですが、実は30歳の時に突発性気胸という肺に穴の空く病気になり、5年の間に3度も発症してしまいました。それで、それまでのポリエステル樹脂を使った作品づくりができなくなったというのが実情でした。一日二箱というヘビースモーカーだったのですが、それともお別れしなければなりませんでした。新しい制作方法に移行する必要が出てきたのです。
そこで、粘土を素焼きするだけという、シンプルで体に負担の少ない技法を用いることにしました。しかし、当時その知識も経験もほとんどなかったので、全て手探りでした。自作の焼成窯やテラコッタ粘土づくりなど、今思えば懐かしく、それから33年を経て今の職に就くとは予想もしない、人生で最ももがいた時代でした。もちろん、今も造形的にも未熟なことは十分自覚しており、日々精進するしかありません。稚拙なものしか作れませんので表に出すには勇気がいります。将来への期待を込めて温かい気持ちで、これらをご覧いただけたら幸いです。