「造形遊び」には、すでに20年の歴史があるが、これまでの取組を類別すると、「現代美術的な要素を取り入れたもの」「子どもの発想を生かし、子どもらしさを大切にしたもの」「子どもが材料を使って、あるいはつくったもので遊ぶもの」「子どもの思うがままに何をしてもよいもの」などが挙げられ、指導者によって受け止め方が様々であった。
「造形遊び」の導入の当初は、遊びのもつ総合性によって幼稚園と小学校の指導に関連性をもたせようとする目的があったものと推察されるが、小学校の高学年まで拡大されたことで、小学校と中学校との連携をどのように図るべきかという問題も新たに浮上してきたように思われる。
(2) 高学年「造形遊び」の指導と評価の考え方
ア 指導上のポイント
新学習指導要領における〔第5学年及び第6学年〕「A表現」(1)の内容 (1) 材料や場所などの特徴をもとに工夫して,楽しい造形活動をするようにする。 ア 材料や場所などの特徴をもとに発想し,よさや美しさなどを考え,想像力や創造的な技能などを総合的に働かせて楽しく表現すること。 イ 材料や場所などに進んでかかわり合い,それらをもとに構成したり,つくるものと周囲の様子を考え合わせて表したりしながら造形遊びをすること。 |
「造形遊び」では、子どもたちが身近にある材料に手や体全体を使って働きかけ、その材料や場所のもつ特徴から造形的な思いを自由に広げ、子ども自身が表現の方法や内容を選び、試行錯誤しながら造形活動を進められるようにすることが大切である。また、そのためには、学習の過程で子どものよさや可能性を生かし、自己学習能力や表現力を身に付けられるような指導や援助が必要である。
「造形遊び」で重要であると思われる指導上での留意点を、次にまとめてみた。
① 子どもたちの連続的な発想を誘発し、活発な活動へと展開させるためには、子どもたちの小さな思い付きを大切にし、それらを基にして自信をもって表現できるように励ましてやること。 ② 子どもたちの思い付きをいち早く見抜くとともに、活動そのものを楽しめるようにその思い付きを認めてやること。 ③ 子どもたちの活動で、停滞している原因を見抜き、言葉掛けをしたり材料の扱い方を具体的に示範したりして、発想を広げられるようにすること。 ④ 外見的な行動だけでは子どもたちの個人差は把握できにくいので、一緒に遊んで、その実態を肌で感じながらの支援を心掛けること。 |
これまでの造形指導においては、「指導者が題材を決めて材料や用具を準備し、技能的に優れた参考作品を提示する。子どもたちは、自分の作品をそれに近付けようと頑張る。」などの方法がよく見受けられた。しかし、このような指導方法では子どもたちの個性が現れにくく、指導者の指示を待つという傾向も見られた。これからは、「指導者が作品のイメージが先にあり、それをいかにして教えるのか」という考え方から、「子どもが表現したいものを、どのように引き出していくのか」という考え方へと転換する必要がある。
イ 評価について
「造形遊び」の評価においては、テストなどによる数値化や点数化は馴染みにくい。評価に際しては、子どもたち個々の表現過程に着目し、子どものつぶやきや想いを具体的に読み取り、個性に応じた共感と指導・支援を行うことが大切である。
「造形遊び」では、活動の形跡すら残らないことも予想される。故に、作品の結果から優劣を付けるような評価の仕方は意味をもたない。評価はそれをすることが目的ではなく、むしろ、子どもの学習への取り組みや学習後の変容などをとらえた形成的な評価となることが重要である。
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