土笛の作り方
① 形づくり
子どもの握りこぶし位の粘土の固まりで玉を作る。それを卵形に変形する。
② 歌口づくり
直径1センチ位の棒で頂点に穴を開ける。 深さ1センチ位。
③ 割ってくり抜く
糸で2つに割って厚み5ミリ位に全体をくり抜く。針金を曲げたものでもよい。
④ 共鳴口の加工
図のように内側が穴に近づくにつれて薄くなるような構造に削る。
⑤ 張り合わせ
接合部を荒らし、水で溶いたどべを塗り、なじんでから張り合わせる。
⑥ 指穴開け
たくさんの音階は鳴らせないので、手前親指側2つ、表側4つの指穴を開ける。
⑦ 鳴らし方
唇を薄く開き、突起に強く当たるように吹く。
ポーという音が出るまで角度を変え試す。
⑧ 焼成
素焼きする
野焼きしても薄物なので失敗は少ない。
*「焚き火焼き」参照
⑨ 鳴らし方を工夫する(オカリナヘの進化)
土笛をよい音で鳴らしたり、正しい音階を吹き分けるには技術がいる。正しい位置に吹いた空気を導く補助具を考えてみた。
少量の粘土に図のような形状の竹べらを突き刺し、引き抜いて作る。
図の位置にあてがって吹くとどうだろう。
澄んだポーというよい音が出る。音階も幅が広くなる。この補助具を本体に固定し、持ちやすく指運びがスムースに行えるように改良したのがオカリナである。
オカリナの形を作ろう
○ よい音の出る形は
流線型で雨の滴の形状が、持ちやすく安定した音が出る。
○ 大きさによって音の高さが違う
大きくなると低い音になり、小さくなると高い音が出る楽器となる。
一般に、F調が(絶対音階のファが基音調)最も美しい音色がするといわれている。
焼成すると約1.5~2割縮むので、音は全体に高くなる。
○ 作り方(基本形は球から)
作り方1:円錐状にし、歌口をひねり出して形を作る方法
横空気の流れが悪くならないように、横から見たときの形が図5のようになるように作る。
作り方2:本体と歌口を別々に作り、ドベで一体化する方法
本体の形を滴状にし、歌口の位置に2cm位の深さの穴を空け、ドベで接着。
次項7のように鳴子を別に作り、歌口として接着してもよい。
鳴子の作り方
笛のしくみを知るために歌口を作ってみよう。
○ 指先を使って(図7)
直径3センチの粘土球に、人差し指を差し込んで外形を円筒に整える。
5番の共鳴用棒を中ほどに突き刺し、中とつなぐ。
2番の歌口道用ヘラを先端中央より図の位置に差し込み、人差し指と親指で挟み込んで粘土の先端を簿くし、ヘラと同じ位置に合わせる。
○ 先を手でふさいで吹くと、鳴った!!(図8)
ヘラを抜き、唇に当て吹いてみる。ピーと高い音がする。鳴りにくいときは、手のひらで穴を塞いで吹くと音が鳴りやすい。その際は低い音がすることに注意。
これは閉管と開管の構上の違いから生じるもので、波長が倍の長さになり理論的には約1オクターブの差がある。
オカリナに命を宿そう
○ 共鳴穴を作る (図9)
共鳴用のヘラを1cm程差し込む。
○ 二つに割る (図10)
しっぴきで図のようにカットする。くの字にしているのは、接合のときに狂いにくいためである。歌口道の延長線より少し先端よりの方がよい。後に共鳴穴のでき具合を確かめるとき判断しやすい。
○ 粘土を掻き出して(図11)
約4から5ミリの厚みを残して中をくり抜く。共鳴穴付近は、点線以上に彫り込まないこと。先端は隅までくり抜くこと。掻き出した粘土は一固まりになるようにすると、乾燥せず直ぐに使用できる。
○ 歌口を作る、鳴るまでがんばる (図12)
吹口の中央より歌口道用ヘラを少し差し、正しくA点に導くために立体的な視点で進める。
まず、真横から見て点線上にあるか確認して少し進める。次に真上から見て線上になるように修正し、進める。これを交互に繰り返し所定の位置に到達させる。大きくずれた場合は埋め直して再度行う。
共鳴穴が歪んだり、バリが出たときはヘラを少し抜き、共鳴穴用へラで修正する。粘土が柔らかすぎるとヘラに粘土のかすが付き、作業しにくい。その都度余計な粘土のかすは取り除くようにする。内側斜線部を細工ヘラで削り取り、ヘラと同じ平面上となるようにする。外側斜線部を同様に削り、くさび状の突起形状にする。この部分の精巧さが、音域の広さや音色の良さを左右するので慎重にすること。鳴りが悪いときは、この行程を再度行い満足のいく鳴り方になるまで繰り返す。ヘラにかすがついたまま抜いてしまうと、歌口道を塞ぎ、小片が残るだけでも鳴らなくなる。共鳴穴の大きさや、吹き出し口の厚みによって音量や音色が変わる。
○ 慎重に張り合わせる (図13)
切断面を合わせ、ゆがみを直す。
接着面をヘラで刻みをつけて荒らし、同じ粘土を水で溶いたゆるめのどべ(トロ)を両面にたっぷり塗る。染み込んで荒らした箇所がなじんで柔らかくなったら、張り合わせる。
はみ出たどべを少し残し、3のようにヘラで枕状の傷を付け、細線状の粘土をヘラで押さえるように補強する。または、時間があるときはそのまま置き、どべが適度の堅さになってから削り取って成形してもよい。
① 接着面をクシで荒らす
② どべを両面に塗る
③ ヘラで枕状の傷をつける
④ 細線上の粘土をヘラで押さえ補強
音階づくりに挑戦
○ 運指 (図14)
オカリナには不思議な性質があり、穴の大きさが同じであればそれらを開閉するとほぼ同じ音の高さになる。指使いはリコーダーに慣れ親しんでいると思われるので、似た運行を例に挙げるが、演奏者独自の奏法を工夫するのも楽しい。左手の小指はオカリナを演奏中に固定する役目を果たしているが、最後まで押さえることになるため薬指を動かしにくい人は(指の機能が十分分化していない場合)、離しておいてもよい。
○ 指の位量 (図15)
指穴はなるべく共鳴穴から離すようにした 方がよい。近いと気柱が関係して影響を受け、かすれた音になったり高音部が出にくくなる。
指同士の間隔や持ちやすさを考慮し、指穴の位置に仮の印を付ける。
○ 最初の音を相対音階の「ド」と考える (図16)
調音の基準は440ヘルツの「ラ」を用いる場合が多いが、手づくりのオカリナは大きさも形も様々なため、基準音が異なる。そのため調音用の穴を余分に開けて調整することになるが、穴を開けていない状態で鳴る音を、相対的な基準の「ド」と考えるとよい。
○ 「レ」が決まってから「ミ」に挑戦 (図17)
およその穴の大きさは実寸図を参考にするとよいが、低音階から徐々に決めていくとよい。調音器を使うとより正確に測れるが、息の強さや、吹く角度によって音が変わるので、吹き手が音階を正しくイメージすることが大切である。
最初小さな穴を竹ぐしで開け、鳴らしながら徐々に音合わせをする。
○ 指穴の処置について (図18)
穴開けのとき、周辺が変形する。内側は針付き棒で削り取り、外側も図のように面取りをすると指先がフィットして空気漏れも起こしにくい。
○ 音の高さは
低い場合は穴を大きく、高い場合は埋めて小さく開け直す。
○ 大きく開けすぎた穴や位量の修正法について (図19)
穴の周囲に薄くどべを塗り、少し大きめ の丸めた粘土を埋め込み余分なものを削り取る。なじむまで少し時間を空ける方がよい。
○ 途中で音がかすれてしまった場合
作業中に誤って共鳴穴の空気分離壁が変形 していることがあるので、歌口道用ヘラを差し込んで位置と形状を確認する。
指穴が共鳴穴に近づきすぎていてもかすれが起こる。
8音以上鳴らすには、全体が正しい構になっている必要がある。
○ 音域を広げるためには
「ド」を基準音としたが、それよりも低音を鳴らしたいときは右手中指の近くにもう一つ穴を開け、1本の指で2音を担当する。図では低「シ」と低「ラ」の場合を示している。
作品には大きくサインを
○ 日付、制作者名をしっかりと刻む
制作中は自分の作品を見間違うことは絶対にないと信じているのだが、焼成すると2割近く縮んで色がすっかり変化するので、たくさんの作品を1度に焼成するときは必ずサインがいる。何年か経って、ふと作品を手にしたとき日付が入っていると、そのときの情景が懐かしく甦るものである。自分のものであるという証しのために、心を込めてサインする。
○ 乾燥
水分がたくさん残っていると、焼成のとき気化して膨張する力で破裂してしまう。2日位は風の当たらない日陰でゆっくりと乾燥させる。焼成する前日に日向干しすると最適である。このとき粘土内の水分量は約3割である。乾燥時点で一番多い失敗は、接合部の亀裂や接着部の剥離であるが、一度乾燥してしまうと修理が困難なので、焼成後に修整する。
○ 焼成
特に注意したいのは、180度で水分が完全に蒸発するが、それまでは急激に温度を上げないようにする。また、580度で溶変が起こる。化学変化が起こり性質が変わるので、このときも注意が必要である。粘土の成分によって違うが、800度~900度を目安に焼成する。
○ 素焼きにするわけ
金管楽器を演奏すると、息の中に含まれる水分が水滴となってたまり、除去する作業が必ず必要となる。オカリナも焼き締めてしまうと同様のこととなる。快適に演奏するため素焼きで止めることを勧める。素焼きの方が柔らかい暖かみのある音色に感じるのは、気のせいだろうか。
○ どんな焼成法がある
① 落ち葉を使った焚き火焼き
② 一斗缶と植木鉢を使った炭焼き
③ ガスコンロと植木鉢による焼き方
④ もみ殼やかんなくずを使ったくすべ焼き
⑤ 土に穴を掘って廃材で焼く野焼き
⑥ 200度位までオーブンを使って慣らし焼きし、野焼きすると割れにくい
○ 焼成後の修整
接着には、割れたものは2液混合タイプのエポキシ系樹脂接着剤が適している。硬化時 問は5分、30分、1時間、10時間など多様で あるので用途に合わせるとよい。ゼル状タイプの瞬間接着剤や陶器用接着剤やパテも市販されている。
接着部が目立つときは、彩色してもよい。
○ 焚き火焼き 1時問の焚き火で手軽に焼成できる方法を紹介する。(ヤキイモ付き)
① 焚き床を作る。作品を焼く前に焚き火をし、ある程度のおき火や灰ができたら火をおとす。
(焼きむらや焼き割れを防ぐための、おき火である。)
② おき火や灰の中に、作品が重ならないように置いてから落ち葉をかける。
(はじめは、直接作品に炎が当たらないようにする。)
③ 木の枝などの小さな薪、新間紙、落ち葉などを組んで火を着ける。
④ 30分程度時間をかけてじっくり蒸すように焼く。
(このとき、粘土の中に含まれている残留水分が蒸発する。これを急ぎすぎると水蒸気の膨張によって作品が破損する場合がある。)
⑤ ある程度、焚き火に火がまわったら、ホイルに包んだサツマイモなどを入れる。
⑥ 大きめなたきぎをくべ、火力を強めて30分程度燃やし続ける。 (焚き火をしながら焼きイモを分けあって食べる。)
⑦ たきぎが燃え終わったら、火ばさみや棒などで灰の中から作品を見つけて取り出し、冷めるのを待つ。
○ 仕上げ
湿気を吸収できるように素焼きにする。柚掛けをする場合は、歌口の部分を避ける。
そのままでも十分に趣があり使い込む程に味が出てくるが、彩色する場合はアクリル絵の具が手軽である。重ね塗りや薄塗り混色も可能で、速乾性なので作業しやすい。
絵の具は、素焼き肌で吸い込みが激しいため、水分量を多めにすると塗りやすい。乾燥後、布で磨くと自然な光沢が出る。つや出しにはニスを使用してもよいが、共鳴穴や歌口道を塞がないように注意すること。
○ 調律
他の楽器と合奏するときや絶対音階に調律するときは、オカリナの下部に調律用の穴をあらかじめ開けておく必要がある。焼成後、可塑性の粘土などで埋めて音を合わせる。
○ 演奏
一般的な運指表を示しておくが、オカリナは同じ穴の開閉では位置に関係なくほぼ同じ音の高さになるため、演奏者が独自の運指を開発する余地が残っている。自分のオカリナで自分だけの吹き方で、自分の曲を鳴らそう。