表現の傾向として以下のように①視覚的②感覚的③装飾的な3つのタイプに分けることができる。
①視覚的にとらえるタイプは、 題材が変わっても表現形式はほとんど変わらない。 側面的なところに視点を固定して基底線を設け、 空間を広くし、小さめの形態にする特徴がある。 また、 対象を空間の中で認識するという立場でとらえているようである。
②感覚的に表す夕イプは直感的で早描きであり、 細部にこだわらず端的に対象を捉える傾向がある。また、 ひらめきを呼び込んで表現に生かすようである。
③装飾的に表すタイプは、 常に多彩ですべてのものを楽しく飾ろうとする。 形態は現実離れした装飾的な創造の感じが強く表れ、 羅列的な描き方となりヮイドな表現である。
その他に視覚的な面と感覚的な面との間にあって揺れ動いている場合がある。 これらのことを知っておくと、 その生徒のタイプに合わない表現を要求することによって生ずる問題や、 やる気を失わせる題材設定を避けることができ、 生徒の個性に応じた表現を伸ばす適切な援助ができると考える。
エ 全体指導において留意したい事項
集団の中でほめるときは、一般にうまいとされる模範的なものではない方がよいようで、誰もが共感できる要素が含まれているか、 驚くような斬新なアイデアや発想を紹介すると効果的である。
興味・意欲などを喚起するプラス的要素を持つエネルギーや、 逆にやる気を削ぐマイナス的要素のエネルギーさえも、 体の中では伝染しやすい。 教師自身が極力本音で語りかけ、 教訓や押しっけにならないようにし、集団からわき起こるェネルギーをうまく活用できると、援助も生きてくると思われる。 集団指導では、 皆に同じ考えを植えっけるという目的ではなく、人と違つたその人自身の表現や考え方を大切にすることを奨励したい。
美術教室での教師の最も重要な役割は、 創造的雰囲気を作り出すことであろう。 優れた指導者にはそれぞれ独自の下ごしらえの苦心があることを忘れてはならない。 すべてのことを教えてしまおうとしないことである。 たとえ小さな発見でも、 自分で見付けた喜びはかけがえがないものである。
オ 個人指導で気を付けたいこと
絵をけなすことはその生徒をけなすことであり、絵をほめることはその生徒をほめることである。
今、 この生徒は何を考えているのか、 何を迷つているのかを察知し、 それらを解決できるように個々に話しかけ、 その生徒の世界が開かれるよう手助けをしてやれることが必要なのである。 そうすることによって自信を取り戻し、 描こうとする意欲が高まり、 迷つていた生徒も積極的に筆を取り上げるようになる。絵が描けなくてじっとしている生徒は、”素直に自己表現ができない”ということを態度で自己表現していると解釈できる。
自信を持って熱中して描いている生徒に対して、 過ぎた指導はいらないようである。 そばにいて関心を寄せるだけで充分で、 自然な表現に賞賛を与えたら、 生徒は楽しく自信を持つて描き続けるものである。
カ 支援や援助の精神と効果について
生徒自身が「分かる、楽しい、納得のいく学習」と思う5つの視点を挙げてみた。
①強い感動に基づく表現活動か。
②表現目標を主体的に把握させているか。
③生徒の力で目標の達成度が確かめられるようになっているか。
④個性や能力を伸ばす指導を重視しているか。
⑤美的・創造的活動を確かめ合う場を重視しているか。
– 3 –